2015年8月23日日曜日

【まとめ】「ズルさ」のすすめ 佐藤優

【まとめ】「ズルさ」のすすめ 佐藤優

------------------
まえがき
------------------
■日本の社会構造に問題あるが、「社会が悪い」とそれにひねくれたり、
 将来に展望をもてず人生をあきらめてしまうのはイヤだ。
・滅私奉公で土日も返上で仕事して、残業300時間という生活では人生の意味を失う。
・会社でがっついて管理職になりたいとも思わない。
・働きすぎて健康を害すのもイヤ
・正社員として定年まで仕事を続けたい
・出世はしなくていいけど、50代になってから20代の生意気な若手に侮辱的な扱いはされたくない
そんなことを思っている読者のための「ズルさ」を身につける本。

ズルさ→ロシア語で「ヒートリー」。腹のうちを見せない。狡猾な。悪賢い。
チェコ語だと賢い。すばしこい。創意工夫に富んだ。

■もし著者が、会社で働いて、若い人に居酒屋かどこかで伝えていただろうことを盛り込んだ。
 面倒な時代を生きるために必要な「ズルさ」について書いたもの


------------------
1.人と比べない
------------------
■嫉妬はどうしてもあるが、それを原動力として競争心が生まれて、それが企業のパフォーマンスになる

■出世競争に勝者はいない。まず残れる可能性が低い。他人に勝つことだけに囚われることになる。

■2000年のアメリカ映画「キッド」→新自由主義アメリカでも、価値観を問う映画があった

■冷静に考えると、競争から下りて全く違った価値観と人生の目標を定めた方がより有意義に人生を送ることができることもある


■**いちばんよくないのは、出世競争に敗れたからと自暴自棄になって会社をやめること***

■「複線思考」=会社とはもう一つの顔をもつ ことが心の余裕をもたらす。 リスクヘッジでもある

敏感に現実に反応しすぎて劣等感を持ったり焦りを感じるくらいなら、
 ***どこかは自分の方が勝っていると思い込むぐらいが精神衛生上よい***


■人間というのは、ひとつの現実を目にして、自分なりのストーリーを作って、そのストーリーを現実だと認識する動物

■現実をみてそこそこの自分で納得し、満足する心理を一方でつくっておいた方がいい


■「がんばれば必ず報われる」は思い込み。精神主義的な欺瞞

■「ヨブ記」のストーリーの悲惨さ。まっとうな人がとんでもない人生を送らせられる。
 非の打ち所のないほとでも災難にあう、ということをキリスト教は示唆している


------------------
2.問題から目をそむけない
------------------

■少数意見なのに、ネットで熱狂的に支持されて、ずれた考えになるひとたち

■どこか自分がズレてないか?検証せずにコミュニケーションとるといつか思いがけない落とし穴に?
 (KY)

■最悪のシナリオを書き出してみる

■問題を3つのカテゴリーにわける
1。解決可能か
2。解決不可能か
3。解決できなくても緩和することが可能か


■「疑似問題」問題のないところにあえて問題を設定することで、購買意欲をもたせるやりかた

■マイケル・サンデル教授の提唱する「共通善」
みんなが幸せに生きるために、みんなにとって善いもの ということ。

 ・困っている人を見たら親切にする
 ・子どもにはしっかり教育する
 ・社会のために何かする
・・・素朴な共同体としての価値を指す。


------------------
3.頭で考えない
------------------

■著者は、理屈より断然直感派

■イスラエル人は、水道水の水質検査に、とても生命力の弱いエレファントフィッシュを中で飼うことに
→戦争やテロに直面している彼らの鋭い直感力と発想の豊かさ

■社会でコントロールできないもの
 ・相手の気持ち/自分に対する評価
 ・市場(金融市場)
 ・人間の心理(確率ex宝くじ、ギャンブル/合理性 /恋愛)

・・・われわれの日常は、理屈で割り切れるものだけで成り立っているわけではない


■理屈一辺倒の人ほど仕事ができない

■女性は男性より直感力が強い→違和感を感じる能力。そこから一転して論理的になれる。
 それは日ごろ常によく観察しているということ。

■田舎の生活の「土地・人間関係」に縛られるのがイヤで、他者の存在が希薄な都会へ・・・
自由/自我/自意識の価値観が一番の現代。そこで自分のことばかり考え、答えの出ない「自分探し」を・・・
それなら、思い切って面倒だと思う人間関係に飛び込んでみる。他者と向き合いながら何か役に立つことをしてみる。
そこで他人の評価や自分を見る目が自分に跳ね返り、はじめて自分というものが明確に見えてくる。

■どうすれば直感力が磨けるか?
・多くの人と会って話をしたり関係を築いたりして、人としっかり向き合うこと
・人でなくても海や山といった自然でもよい
・信じるべき神や宗教でもよい。古い宗教の本を読んだり、寺社を訪ねたり、独自に神と向き合う
・代理経験。本を読んだり映画を観たり。

おすすめの本「インフェルノ」・・・・「ダ・ヴィンチ・コード」を書いたダン・ブラウンの著作。主人公はいつも極限状態


------------------
4.時間に追われない
------------------

■時間の奴隷になるのではなく、自分が主人としていかに時間を有意義に使うか

■まず、ムダな時間を極力削る。実はムダは便利なもの・新しいものの中にこそある
 じぶんで置き換えると・・・htmlとか?テンホウとか?配信とか?

■(おすすめ)
1日を振り返って、そのひにどんなことにどれだけ時間を使ったかをノートに書き出してみる
→1日を通して結構ムダな時間が多いことに気づける。TV・ネットを漫然とやっていたり

■自分がやりたいこと、将来実現したいことも、ノートに書き出してみる
→書くことで自分の志向が明確に。そのうちにやるべき優先順位がはっきりしてくる

■やりたいこと時間を、最初から1日の予定から天引きする (給与天引き貯金といっしょ)

■異業種交流会にやたら顔を出す→こういう場に顔を出す人は本業がイマイチな人が多い
本業で成果を上げている人は人脈が仕事でできているのでそういうところに顔を出す時間も必要もない。

■高額な自己啓発セミナーも要注意。

■「賢者の時間」を大切にする。孤独に、じぶんと向き合う時間。
(自分が望んでいるものは何か?自分にとって大切なものは?自分は何者なのか?)

■成功した人は努力した人の範囲内。ただし努力すれば成功する、という訳ではない。

■ときにはズル休みしてもいい。あえて休んで仕事や情報を遮断する。
 1日2日休んだって会社が潰れるわけじゃないし。うつ病になるよりマシ。


------------------
5.酒に飲まれない
------------------

■2つのタイプ
 ・ダウン系。酩酊状態でぶっ倒れるタイプ。意識を失って体が震えだし失禁してしまう
 ・記憶は飛んでるのに体は元気なタイプ。事件を起こしたり事故にあったりする

■意味のない飲み会やはしご酒(2次会)は避ける。会社のグチや悪口大会は最初から参加しない

■上司と酒を飲んで腹を割ったといって、調子に乗らないこと。飲みの席と仕事とは立場は別。

■いちばん良くないのは、飲んだときの話を蒸し返すこと。
 「こいつは飲んだときの言質をとるのか。厄介だな」と警戒される

■女性は男性と違った目線で会社を見ている。一緒に飲んで話を聞いてみるとか。

■ひとは何かに酔って生きている。酒でなくても
 ・女性にのめりこむ。。
 ・薬物にハマる。。。
 ・宗教・神に酔いしれる。。。

逆に言うなら、何かに酔っているからこそ、人は生きていける。


------------------
6.失言しない
------------------

■小渕恵三元首相が指示した対談前の相手への「べからず集」

■橋下徹の慰安婦問題への発言。二重三重の偏見からくる発言。
 ・男性は衝動的に女性を暴行するものだ、という偏見
 ・一般の人たちが暴行されるのを防ぐためには、特定の人がその受け皿になってもよい、という偏見

■筆者は日々の仕事では、上司にむやみに自己主張せず、上司を立てていた。
 独りよがりの正義感で上司に正面からぶつかるのは、一番愚かな人間のやること。

■組織とは「個人の価値観」「正義感」を超えた論理で動くもの。
 そこで働いている以上、その論理にある程度は巻かれる覚悟が必要。

■合わない上司の下についたら、なんとかうまくやっていけるように最大限の知恵を絞るしかない

■失言しないためには・・・・
 ・時と場所と言葉を選ぶ。黙るところでしゃべり、語るところで言葉が足りないから失言する

------------------
7.約束を破らない
------------------
■小さい約束をきちんとこなすことを繰り返すことで、大きな仕事を振られる。
→小さな約束を守っていくうちに信用を獲得して、さらに大きな約束事ができるようになる

■この構造を逆手に取っているのが詐欺師。小さい約束を守ることで信頼され、大きく裏切る

■遅刻することで相手の時間を奪っていないか。遅れるなら遅れる時間をきちんと伝える。
 ダメージコントロール。

■言質をとらせないー
事実を述べる範囲を限定して、あとは相手が勝手に想像し判断するのを待つというテクニックもあ

■家電量販店ー安いし他の店も選べる。しかしアフターフォローは契約した以上は望めない。保証も決まっている。電話してもフォローはない
 地場の家電ー値段は安くない。暗黙の了解で次もこのお店で買うもの。故障したらすぐ来てくれる。保証期間は関係なし。

欧米的な契約ー短期的な視点で利益を出すための方法としては合理
 地域社会・コミュニティを上手につくって、あいまいな約束事ー実は長い関係を続けるのは
 こちらのほうが適している。

------------------
8.恩を仇で返さない
------------------
■誰でも自分が与えた情は大きく、受けた恩は小さく感じるもの
 「受けた恩は石に刻み、かけた情けは水に流せ」


■封建時代の武家社会
 「御恩と奉公」 土地⇔軍役・経済負担
 受けた恩を心に刻み、それにいかに応えるかが前提だった時代。
明治維新後、身分制がなくなる。学問を身につけ自分の力で生活基盤を築く社会。
家族主義→個人主義

バブル崩壊後、
・高度消費社会(特定の人・個人向けの商品で溢れる)
・金融資本主義(社会の経済活動をすべてお金で換算する)
・新自由主義(選択できる自由。自己責任。より良いことを選択する努力で、自分は変えられる)

■「倍返しだ」は憎しみの連鎖と増幅の論理。世界の紛争のしくみと一緒。
 「目には目を歯には歯を」ハンムラビ法典は、実は「やられば分だけしか報復してはいけない」

■岡田尊司「パーソナリティ障害」
 自己愛型で自己中心的な人は、権力を求め、傲慢で、常に優越性を誇示したがる傾向
→その自尊心と自身にはほとんど裏付けが無く、もろく崩れやすい。
→この障害の原因に、幼少期の親との関係がある。親の愛情を実感できずに育ち、
 自分が愛されるという存在であるという自信が持てなくなる。自己愛型といいながら本当の意味で自分を愛することができない。

→こういう人は自己に執着していて、関心が自分だけに限られる
 当然、他人の恩を感じる気持ちが希薄で、恩を仇で返す場合が多い。
 してもらって当たり前。。。今の社会がこういうタイプを作り出しやすくなっている。

こういう人は平気で人を利用するので、短期的には営業などでも成果を上げていて会社から評価されたりしている
承認欲求が満たされ、その成功からますます自己中心的で利益中心的な行動に走る
自己愛型パーソナリティは今の新自由主義の経済・社会システムに適応している

■人間は誰かの役に立っている、という実感、利他的な行動を取りたい
→その方がモチベーションが高く、また長続きしやすい

■マザコンの傾向のある男性の方が、そうでない男性よりも平均年収が高い。

■受けるよりは与える方が幸せ

■自分のためだけにがんばれることはたかが知れている。
自分以外の家族・子ども・知り合いや友だちーそういう人たちとの関係の中で恩を与えたり報いたりしながら生きる
ーそのほうが幸せな生き方では

そのためにはービジネス以外での人間関係をできるだけたくさんもつこと
 家族・友人・趣味のサークル・地域コミュニティ


------------------
9.嫌われることを恐れない
------------------

■アドラー人気から、いかに今、世の中は「嫌われない」志向になっているかということ。

■会社では、競争しながらも、いかに組織の中でうまくやるか、と二律背反を強いられている

■池上彰「会社のことよくわからないまま社会人になった人へ」
→建前として会社は「社会貢献」「顧客満足」を訴えるが、資本主義社会で生き抜くには
 結局は営利団体である。と認識せよ。

■「課題の分離」
他人の評価・評判は自分で操作できない。課題が別なのだと割り切れば、気持ちも楽になる。

■人の顔色を見て自分の意見を変えたりおどおどしているより、
 自分の好きなものを明快に求め、生き生きとしている人のほうが魅力的

■まずは嫌われていても、自立して飯を食っていけるくらいの力があるかどうかが重要

ルサンチマンー恨みや妬みで勝者を引きずり下ろしたいという強い思い。

自分を殺し、抑圧し続けると、社会や他人に対する憎悪から、本当に取り返しのつかない
反社会的な行動に走ってしまうことも。

■そのためにはー、日ごろから自分が何をしたいのか、どうなりたいのか?をイメージしておく

■ノートに書き出してみる。自分の考えを視覚化することで、頭が整理でき、
 譲れる/譲れない部分がはっきりしてくる



------------------
10.人を見た目で判断しない
------------------
■五味川純平「戦争と人間」より  「そいつがどんな飯の食い方をするか」
→誰かをダマしていたり、汚い手段でお金を儲けているようなやつは信用できない

■相手によって態度を変えるような人。上にはこびへつらうのに、下には高圧的に出る人物は信用できない

■すぐに理解しようとしない

------------------
11.上下関係を軽んじない
------------------
■ノンキャリアからキャリアになった苦労人。ただしそういう人ほど威張る上司だった。
アンモニアで目が痛くなるぐらいの便所の掃除をさせられた
→部下は上司を選べない。とんでもない上司の場合、仕方ないとあきらめ、上司と付き合わなくなる
 機会が来るまで我慢するしかない。

■組織が機能するためには、そこにいる人間は歯車にならざるをえない。そこをよく認識すること。
 軍隊でも会社組織でも本質的には同じ。

■部下が上司に歯向かってもほぼ100%負ける。組織は常に上の味方。そう思って間違いない。

■組織は基本的に反抗者を嫌う。どんな国でもどんな組織でもどんな時代でも一緒。
 セクハラ・パワハラで上が飛ばされる機会があっても、2年くらいすると訴えた側も異動になるケースがほとんど

■上の人間にまともにぶつかるのは避けよう。下手な正義感で、自分が組織を変えてやろうなどと思わないこと


■上司に対しては過度の期待をしないこと。上司の八割は頭がおかしいと思って割りきれ。
 その方が気が楽になって、何かあってもしかたがないとあきらめやすい。


■権力の本質は人にイヤなことをさせる力

■問題社員を引き取ってはいけない。チームは掛け算の力。一人「0ゼロ」がいると何人いても成果が0になる

■10年後を明確にイメージする
→労働力をコモデティ(商品化)させずに、代替不可能な人材になる

■生き残る人の上手な逃げ方
 ・趣味に肩書きを持つ(会社じゃ使われても、習い事の世界では教える立場、とか)
 ・副業。収入の複線化。精神的にも経済的にも余裕ができて、職場のストレス耐性になる
 
逃げ場を作る。対決しようとせずに逃げる。仮病でもいいから一旦休む。適当に休む社員の方が会社も助かる

■複数の価値観を持つこと

 ・自由や平等が幻想に過ぎない。人間同士で組織を作る以上、上下関係と権力構造の中にいるしかない
→「ただし、それを見極めるところからしたたかさと強さ、そして実現は難しくても大切な理想があることを知る。
  そこで葛藤し、もがきながらも生き抜くこと。それが人間としての価値であり生きる強さなのです」

20150823

0 件のコメント:

コメントを投稿